(秋風が吹く枯れすすきの原で)/吉岡孝次
あの日
僕はいくつかの過ちをおかした
あの日
僕は過ちをおかしたのだ
秋風が吹く枯れすすきの原で
膝をつき泣いていた
誰が僕を許してくれるというのだ
空には縹渺と雲が流れ
手の甲ににじむ血もいつしか乾いてゆく
立ち上がることさえできずにいつまでも泣いていた
「さあ 行こう」と
言ってくれるひとはどこにもいないと知った
あの日
夜の迎え方がわからず
ただ茫然として
落ちる陽を眺めていた
切り傷のようなものが頬の上に走った
どくどくとあふれ出す何ものかを懸命におさえた
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