本を読んだ後に入り込んだ一瞬/tonpekep
化石を拾う
改札口は静かで
足跡ばかりが通り過ぎていく
ぼくはそこで案山子になっている
へのへのもへじ
通り過ぎてく人に
顔は何気にそう書かれてしまったけれど
何か無限のようなかなしみを
やり過ごしている
ちょっと斜めに傾いている
それくらいが丁度良いみたいに
案山子の影はぼくを支えている
からからと地球儀は回っている
からからと地球儀は回り続け
何もないところに
山や海や川を零してゆく
そうして泣き虫たちが
そこに国境の線を引いてゆく
丸い形になって
固まってゆくぼくの希望
ころころとシーソーの上で
上がったり下がったりしている
ぼくは何を書いているのだろう
誰かを愛していなければ
そして愛されなければ
人はすぐ死んじゃうってことを
伝えたいのだけれど
鍾乳洞のような電車がやって来て
窓から一斉に白い鳩が羽ばたいたりするけど
それは手品だということを
ちゃんと理解しているから
みんなにこにこと拍手喝采している
戻る 編 削 Point(14)