天沢(あまざわ)オリオン/けんご
余がルクセンブルグのハイデルカイアットホテルに滞在の折り
夜の列車が汽笛を鳴らしてコーマ駅を出発するのが聞こえた
ホテルの二階 赤茶けた電話機に接続すると
余はコンピュータースクリーンにコードを噛じる電気リスを見いだした
おおよそ彼らの仕業は 下々の従業員にも知られているらしい
ロビーからコントラバスの奏でる「臭気 天沢オリオンに達っす」
の調べが響いてくる シュトットガルトから訪れた紳士も
「くすり」
という若干気味の悪い笑みをもらす 余はバルコニーに居場処を移して
銀河が横たふ満天の星々を見つめた おゃ あれが天沢オリオン? いやあ
そうではない
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)