雪葬/蒸発王
真っ白な雪野原での事でした
真っ白いその空気の中
インクを垂らしたように
その黒い人は立っていました
時折はためく
やはり
黒いマフラーが
降る雪と交差してまだらに映りました
その人は一人であったのです
確かに
一人であったのです
けれども
抱きしめられていたのです
その人は
抱きしめられている様に見えたのです
頭を垂らした細い首は
力なく吐く白い吐息は
しな垂れた2つの腕は
小さく見える背中は
確かに抱きしめられていたのです
身にまとう黒は
喪服
雪葬の場を
私は
見たのでしょう
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