花葬/蒸発王
んでいました
私の身体には
母が生きていた証のように
打たれた跡の
どす黒いアザが残っていました
一人きりで弔いをすませ
庭の土に母を埋めて
私はこの時
初めて
手向けの花を
用意していない事に気づきました
家の中を引っ掻き回して
私は母へ贈る花を探しましたが
花は見当たりませんでした
でも
私は思い出したのです
おとぎ話で
悪者の血から花が芽生える事を
滴り落ちる血潮から
花が芽生えると思ったのです
私は腕に足に首に
刃を滑らせ
母の墓石に血を
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