熱/松本 涼
 
ぼんやりと宙を見つめていた

これは失敗なのだろうか


けれど気分はそれほど悪くもなく
ここ数日僕に纏わりついていた熱も
すっかり冷めたようだった

それから僕は急激に睡魔に襲われて
そのまま布団に潜り込み
朝までぐっすりと眠ってしまった


翌日僕はまた例のスーパーに寄って
店先で【全てを吐き出せる場所キット】を探してみたが
それはダンボールごと消えていた

僕はスーパーの店長を呼び
「【全てを吐き出せる場所キット】は売り切れですか」
と聞いてみた

店長は怪訝な面持ちで
「何ですかそれは?
そのような商品は当店では扱っておりませんが」
と言った

予想通りの答えに僕は
「どうもありがとう」
と言って家に帰った


念のため財布を何度も調べてみたが
昨日のレシートはもちろん見つからなかった


それから僕は部屋の窓を開けて
変わり始めた季節の
少し冷たい風を
久しぶりに感じていた




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