一輪の花と共に…/癸
ミングを贈る。
橋の上では不規則に、しかし、途切れる事無く、
高架線からは、時折、長い列の光のエールが舞う。
すぐ近くでは、手を振る草花と共に虫が歌っていた。
もう一度、大きく煙草を吸い、灰を落とした。
火の移ったままのそれは風に舞い上がり、
オレンジ色に輝く蛍となって、その短い命を散らす。
ふと、その先に一輪の花がある事に気づいた。
吹き続ける風にその身は揺れ、
白い花弁が月明かりに照らされている。
もう少し、こいつと、
この歌を聴いていよう…
そう思い、もう一本、煙草を手に取った。
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