一輪の花と共に…/癸
夜、仕事の帰りに川沿いにある歩道へと足を向けた。
右には車の通る大きな橋が見え、
左には山を背に高架線が見える。
その歩道へ降りる階段の中腹で足を止め、
腰を下ろした。
山から吹き降りる風は肌に心地よく、
周りの草花を申し訳程度に揺らす。
上の車道からは死角に入り、
この闇の中で一人、
階段の中腹に腰を下ろす自分の姿は、
橋や川向こうからは見て取る事は出来ないだろう。
煙草に火を点けた…
ジッポの甘い香りと、
心地良い刺激が、口の中に広がり、
消えていく。
川向こうでは、ライトアップされた工場が轟音を歌い、
流れる河は、光とせせらぎのハミン
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