檻の夜/A道化
雲の
静かな暴走
高い青へ青へ
ゆけない、わたしの上に
上空があって
午後、
稲穂というよりも、風だった
肌が痛いほどの
午後だった、秋だった
その風
雲の
静かな暴走
ふと、高い青へ青へ
痣が、塞ぎこむ雲のお腹の痣へ厚ぼったく重なってゆく
そして無痛の黒色から、雨が、線を
無風の、無色の、雨が、線を
黒い夕刻に無数の線を、引き
ひとりにつきひとつの檻を静かに突きつけてゆく
檻がこれほどに後を絶たない夜に
鍵を持たない手のひら、と
鍵を持たない手のひら、は
きっと、巧く優しくなれるはず
傘の柄を握る
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