雨/蜜
初めて彼に会ったのは
くしゃみが止まらなくて仕方ない時期
思いも寄らぬ早さで時間が過ぎて
私が涙を流す頻度で五月には雨が降った
雨
彼に会う日は必ず
雨降りだった
いつか晴れると思って・・・
来ちゃった・・・
一緒に住む積もり
と
告げると
そうか
と ひとこと言って
雨合羽を手渡してくれた
もったいないから
雨合羽はカバンに仕舞い込んだ
その日は納得して帰った
ずぶ濡れのまま納得して帰った
翌朝には雨合羽を広げて
あまりの嬉しさに
袖を通し外出した
雨は止んでいた
次に彼に会う日
やはりその日も雨で
彼にとっては 初めて見る雨合羽姿なのに
別れを告げられた
びしょ濡れの雨合羽には触れたくないほどの憂鬱で
その日は雨のように泣いた
疲れるほど泣いた
雨の日には彼に会える気がして
雨合羽を着ては
彼の家の近くまで行くのだけれど
雨降りなのに会えなくて
私がためいきをつく頻度で十月に雨が降る
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