すいとんエクトプラズム/大覚アキラ
乳白色の湯気が勢いよく立ちのぼる
土鍋の底から沸き立つあぶくどもが
我先にと曖昧な螺旋形の魂に姿を変えてゆく
久しぶりね
すいとんなんて
妻はそう言って微笑むが
土鍋から吐き出される螺旋形の魂が気になって
私は最早すいとんどころではない
あなた好きだったでしょ
すいとん
そうだ妻の言うとおり
すいとんは私の大好物だったはずだ
だがこれは本当に私の知っているすいとんなのか
ほら冷めないうちに食べてね
すいとん
妻は螺旋形の魂を
箸の先で素早く捕まえると
暴れるそれをポン酢につけてツルリと飲み込んだ
あらおいしいわね
このすいとん
私も妻を真似て魂を捕まえようとしたのだが
結局上手くいかず
ほとんど全部妻が食べてしまった
ああおいしかったわ
すいとん
真夜中
私の隣で寝ている妻の唇から
羽化した蛾のように無数の魂が飛び立つのを見た
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