恋時雨(こいしぐれ)/こしごえ
 
つぶやいた名が深く響く
空は鈍色(にびいろ)をして時を孕む

いらっしゃい必然的本体
欲する無欲が降ってくる
浴びる黒髪

月光のもとの
涙する獣道で
懐かしく鋭い爪が轟く

記憶の谺(こだま)が風を呼び
濡れた黒髪燃えて咲く

ぢりちりと胸焦がし

幾千幾億の落下に立ちすくむ
過去の影の分裂していく
青さに闇は震えて恋時雨
さぞかし響くことでしょう

移ろう時の雨あがり
雲間の虹に
微笑み一つ



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