小詩集「書置き」(五十一〜六十)/たもつ
自転車のペダルをこいでいると
それは何かの高さの
ようでもあった
転落しないように、と
二人で笑って
幸せだったかもしれない
+
扉を開ける
また扉がある
今度こそは、と開けると
案の定扉はある
入ろうとしているのか
出ようとしているのか
わからないうちに
通過してしまった
動かなくなった父の側を
+
ハウスの裏は
どこまでも川がつながっている
余計なお世話ですが
ポテトのSはいりませんか
という店員の辱めにもめげず
僕らは馬の姿のまま
身勝手にギャロップをしている
+
テーブルの上に
林檎が一つ置かれている
の音
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