「詩人辻征夫に捧ぐ」/刑部憲暁
 
遠い記憶よ
まぼろしの子に向けられた 狂おしい眼差しよ
おお 歩みくる子の哀しげな純情よ
抱きとめんとする刹那 走り去り
はるかな雲の記憶の内に 瞼を閉ざす
まだ 追いかける眼差しがある
雲を払い 縋り 飛び去る
鳥のような 眼差し
気付けば その後ろ姿
おお 羽折れた詩人よ
何ものにも触れなかったあなたは
永久に消えゆく鳥
蒼白の
遠い記憶
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