シリーズ「おじさんと僕」2/ベンジャミン
 
う。


もう何十年も自転車ばかり相手にしてきたと苦笑いを浮かべながら、だんだん身体が言うことをきかなくなってきてしんどいよと愚痴をこぼしていた。

おじさんはいつも
「生きてるうちに、一台でも多くの自転車を世に返すのが俺の役目さ」と
まるで自分の子供のように、組みあがった自転車を撫でている

「こいつらには、まだまだ交換部品があるからいいよ」と、笑いながら

おじさんはすっかり油のしみ込んだ手を
淋しそうに眺めているけれど

僕には

ぱっとひらいたおじさんの手が
まるで勲章のように見えてならなかった


     
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