BOREDOM/大覚アキラ
 
左肩に星のかたちのタトゥー
唇にはフランスの煙草
彼女はいつも退屈してる

なにもかも
呆れるぐらいあっという間に終わっていくから
暇つぶしにもならない
そう つぶやいて
彼女はテレビをつける

音量を絞りきった真夜中のテレビでは
耳慣れない名前のボクサーが
顔を血だらけにして殴り合っていて
観客は全員 目隠しをされたまま眠っている

もしかすると観客は
全員 マネキンなのかもしれないし
あるいは 死んでいるのかもしれない

いずれにせよ
退屈で
退屈で
死ぬほど退屈なことに変わりはない

彼女はテレビを消して 部屋を出て行く
灰皿に残された 吸いかけのフランスの煙草
音のない部屋の中で煙だけが
螺旋を描きながら ゆるやかに消えてゆく

昨日の夜
帰ってこなかったから
どこかで
死んでいるのかもしれない
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