ふるさと/
さかな
母はいつも眠る前に鍋に水をいれ、煮干をいれる
朝になると
はりがね色の文化釜でご飯を炊く
そのかたわらで
煮干のだしでおみそ汁がつくられる
その朝が私のふるさと
鍋と煮干と文化釜
火をつけて
ふたがカタカタいいだし
釜からは湯気があわのようにでる
火を弱める
ふたがしずかになる
だしをこす
豆腐をいれる
みそをいれる
転々と移ったどの家でも
その朝があった
ふるさとは
そうやって朝の中にあった
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