目覚まし時計/蒼木りん
 
わたしの部屋にある目覚まし時計は
いつも笑っていて
元気で
わたしはそれを見ると
哀れな気持ちになる
持ち主が
こんなにしょぼくれた気持ちで
日々を過ごしているのに
けなげに目覚めの時を知らせて
『起きたの?エライ!』とか
『楽しい一日 始まるよ』とか
励ましてくれるから
それでも
わたしのやくびょう神は
頑固に離れなくて
貧乏神も居ついて
時が来るまで
我慢を重ねている
なんで
わたしは我慢しているんだろう
褒められたりとか
楽しんだりしたいなら
すればいいんだ
気がすすまない事ばかりだから
後ずさりする
他人を愛する余裕がある人は
自分に気づかず
己をかばう人は
他人を愛する余裕がない
目覚まし時計が
泣き顔だったり
落ち込んだ顔だったり
『起きても、また代わり映えしない一日だよ』とか
鳴らなかったら
どんなだろう
嘘でも
それが仕事だからでも
褒められること
励ましの言葉は
いつしか
こころの大地にしみこむものかもしれない

 
電池を取り替えよう

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