秋と人生/あるふぁ
今日という日が過ぎていく。
あなたの母は88歳
わたしの父は84歳。
10年後までのどこかの日で
あなたは母を失い
わたしは父を失うだろう
それは人という命(いのち)の定めであり順序だ。
この目の前の石は何千年か何万年か存在して
丸くなったと告げているが
あなたはこの石を長命として羨むか?
あなたもわたしも何十年かだけ生きて
そして死んでいく。
人の世に何も残せず
無名のままに死んでいくのを惜しいと思うか?
我々はただ人という種の一員なのだ。
生きて、会えて、そして
ひととき愛しあったという
そのことがいとおしい。
急速に秋が広がってゆくいま
万物が実りを迎え、そして死んでゆく冬を前に
二人で静かにこの時を
かみしめることとしよう
戻る 編 削 Point(1)