やもり/ZUZU
 
らきみはもう行ってもいいよ
そしてせっかく二本足のはしくれになったのなら
ぼくをここでこうして
そんなにがっかりさせないでおくれよ
恐れることはないよどこでも大股でまたいでおゆきよ

ああそうだねもういくよ
きみはいつのまにかいなくなってしまっているんだろうね
ぼんやり思い出してきたよ
空のまぶしさだけを忘れずにいたよ
にんげんなんて不自由なものだよ
生まれ変わってもこんどはまたやもりかもしれない

それも悪くないかもな
おどりばの鏡でネクタイの曲がりを直す
階段のしたから片想いの女性がのぼってくるのが映る
あわてて下へ行くのを上に行こうとする
キャッ、とかげ!と彼女は気味悪がる
いいえ、やもりですよ、とぼく






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