かたひざ/なつ
 
すこしだけ
ひざを抱えさせて、という。

たぶん
うつむいた想いと
ゆっくりと進行するあきらめ、と
降りだす直前の雲のようなさみしさ
お気に入りだった音楽や
冷めたカフェオレ、二人乗り
いろんなものが
ひざこぞうに集まっている。
そのひとつひとつに
名前を付けておきたいとも思うし
そっと燃やし尽くしたい、とも。

座布団が秋のにおい
たくさんのものが
涼しくなってゆくんだね。

そのうち、スプーンの奥には
ちいさな種がまかれて
青白く、青白く、燃えはじめる。
右ひざから
あたたまった
カフェオレがこぼれだすころには
足首までぬれているし
やがて、肩まで泣きそうになる。
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