ホテル・モナリザ/ZUZU
 
モナリザという名の
かびくさいモーテルに
ぼくらは泊まった
車のなかで半分とけかけた
チョコレイトのように
きみがどうでもいいというきもちになるまで
ぼくは長い季節をいくつもやりすごした

モナリザのホテルの部屋には
かすれた色のローマの風景画がかけられていた
みなれた景色ですらない
趣味のわるいピンクの壁を見て
きみは感傷的なためいきをつく

これがぼくののぞみかといえば
きっとそうだったのだろう
なのにきみは複製画の微笑みに似て
すべての感情を模倣に変える

きみの永遠の恋人は
きょうも遠い街できみの愛を信じ続けている
ぼくが疑ったのはぼくの愛であって
けっして遠いどこかの誰かの愛ではなかったはずなのに

モナリザという名の
さびしくなるばかりのホテルに
ぼくらは埋もれた
きみは窓をあけて雨をながめている
そして海には遠い客船が浮かんでいる

ぬれているのはいつも悲しみのせい
ローマは雨だと
深夜の衛星放送は伝えている



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