本/葉leaf
 
三本目の脚の脈打ちを性器に感じながら、夜はたちうかぶ精気たちを無数の舌でささえてゆく。いまだ散開しつづける空の屍骸が夜のなめらかな声帯をたきつけて、金属のすりあう音をたてさせている。人と人との間には巨大な獣人がはりつけにされていて、ふくらんだ頭蓋を前にして視点は回転する。

丁寧に折り込まれた冷気が僕の鼻腔にかろうじて届き、ひととき宇宙を圧縮する。星々の代謝のさけびはしるると燃えて、僕の眼のはしに小さな傷をつけてゆき、傷は網膜の裏側へとはなやぐ鉱物たちを舞わせる。僕は手首を装着して、ランプに火をともす。凪いだ感情が灯心へと注ぎこまれて炎化するのを、僕は記憶の先端になでつけている。

本たち
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