魂のたそがれ/いとう
 

触れ合うためにあるものを
手、と呼ぶのなら
私はいらない
私には
ない

たそがれは穏やかに
その時を待つ
眠れない暗闇と静寂は
心を熟すのではなく
怯えさせるのでもなく
ただ過ぎ去り
埃が知らないうちに
肌に吸い込まれ
私のものとなる

満月はいつしか細くなるが
それは欠けるのではなく
闇に満たされるのだ
たそがれは
それを知っている
たそがれは
それを知っているので
私の
手を剥ぎ取る
たおやかに
しめやかに
目を伏せながら

そしてそれは
儀式ですらなく
ただ
日常と呼ばれる



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