北風が かたく きつく しめつけてしまえば/野島せりか
北風が かたく きつく しめつけてしまえば
少しは私も落ち着くだろう
冬の空から放たれる薄い陽射しの中で
動かない空を見つめていた
冬の空には何かがある
いじらしく思わせる何かがある
この空を越えた向こう側
この空を辿れば行きつく場所
冬の空はすべてを知っているはずなのに
同じ軌跡で動いている
北風が かたく きつく しめつけてしまえば
少しは私も落ち着くだろう
冬の空が色褪せる
せつなく思わせる何かがある
高い所から風のただなかへ
思い出の破片が反転するのを見た
いちばん自然な愛の気持ちを
今は時々煩く思うから
北風が かたく きつく しめつけてしまえば
少しは私も落ち着くだろう
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