茶の味/美里和香慧
 
くいやしけいのこえもつひとよ
18.茶葉をかむ (きっと)少しだけ西瓜の味がつまらなくなってきた午後に
19.手の紙におしあてた恋文ひとつ インクのしみに炙りでる声
20.生茶生茶葉茶柱ばしゃばしゃりん じいちゃん手足がびろろろろん
21.空みたことかそら耳はさささ死すそらくりかえすあきすとぜねこ
22.根性なしのたそがれは一字空けのそらみたいにぼんやり優しい
23.みずたまりゆるいしせんはごごよじのいろめつかいだたいようめ ぴちゃ
24.空が、われた。ぴかぴかの王冠バッチかざしてハイホォと笑いながら
25.のほほんとじいちゃんころぶ井戸の端すいか頭がならんで 打ち水
26.薬缶には愛らしきものなべにはまやかしをたらす夕げの支度
27.そう、たぶん恋はうたかた東京の夜は7時と小夜子が笑う
28.ジャズジャズジャムるくらやみにともるノイズはぶるーのーとの声さがして
29.すすっている茶の味よりか棄てられる茶葉のゆくえを気にするよふけ
30.じいちゃんが煙と消える日えんがわに渋茶の湯気がぽつり残った
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