ねじ/沢村 俊輔
 
今日の仕事を終え
一歩会社の外へ出ると
じっと我慢していたものが
じわり じわり
からだから溶け始めた

都会の空は赤く染まり
ビルの頭のうしろへ
夕日が落ちていく
時のふりこは
空を闇に染めていき
一分 一秒
という時間が
どれだけ速いか喋りだす

私は
そのささやきに
耳を傾けていると
闇の中へと
放り込まれた都会が
さまざまな色のネオンで
私のゆるんだ心のねじを
さらにゆるめていく

私は
ゆるんだねじを
巻きなおそうとするが
闇は
強引に
そのねじを取り外し
じわり じわり
からだから溶けた
様々なものを
呑みこんでいく

今日の仕事を終え
一歩会社の外へ出ると
じっと我慢していたものが
じわり じわり
からだから溶け始めた

そして
私のからだは
液状化して
闇の都会へ
とめどなく流れ出していく 



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