ワルツ/suzu
 


夜中に大きな声が聞こえて起きる
ケンカをしていた両親
ときどきわたしの名前が飛び交う
不協和音


十一歳

人との差異を感じることが
わたしの中で強くなる
何でわたしだけ―――
心の中で
何度も何度も繰り返される
即興演奏


十三歳

父がクラシックのCDを買って来てくれた
音楽って素晴らしい!
わたしの心の主旋律は
短調から長調へ


十四歳

窓の外から聞こえてきた
パレードの陽気なメロディ
思わず家を飛び出し
気付くのが遅れた
エンジンの音


病院のベッド

手のひらに感じた
濡れている母の頬のぬくもり
ソプラノの泣き声
父の泣き声
バリトンの響き
弟の泣き声
ボーイソプラノ


そう―――

今まで生きてきて
わたしの中だけで奏でられていたメロディは
今 わたしの中を飛び出して
父 母 弟 の奏でるメロディと合わさり
一つになって


ひとつになって


ひと―――



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