淡水魚/光冨郁也
七月の雨、
アルバイトの休日、
自らの髪をかきあげる。
爪から指の間に、流れる。
部屋には、青い光の点滅がある。
わずかに開けた窓からは、水の音がする。
身体を曲げて、寝返りをうつ。
手を伸ばし、コロンのビンをとる。
なめらかなビンの感触。
指をからめる薄い幅の形。
青いコロンを、
胸にかけ、手を床に落とす。
微かに霧が、空中をただよう。
白いカーテンから、もれるのは、ぼやけた光。
テーブルの上の、水槽に、
一匹だけの、ベタが、
長いひれを、ひらめかせて、青い。
水草の気泡がゆれる。
ガラスのケースに、水滴がついている。
外は雨音。うたたねを繰り返す。
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