老手品師と鳩/suzu
 
ある老手品師は五十年間ずっと

街の広場で

シルクハットから鳩を出す手品だけを続けている

ここの街から あそこの街へ

あそこの街から どこかの街へ

老手品師は分かっている

鳩を出すだけの手品ではだれも驚かない

ただ子どもたちを除いては―――

しかしその子供たちも

一度見てしまえばもう驚くことはない




この街ではもう子どもたちが来なくなった

だからまた

老手品師は

自分の手品に驚いてくれる子供たちを求めて

新しい街へと旅立って行くのだ










そんな街へ私も行きたい

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