平坦な戦場で僕らが生き延びること/高田夙児氏の詩について/渡邉建志
 
たまま
   誰の手に握り締められるのか
   考えて 道を歩く

   点火/点火}

それでも、という。なにがそれでもかわかんないけど、とにかくピースがいいんだろう。おつりの20円は誰かの手に渡っていく、そうして物語が語られないまま広がっていく。そんなことを考えながら、「僕」は歩いている。そしてタバコに火をつける。2度ライターを点火するそのようす。/の示す絵の鮮烈さ。リバーズ・エッジのいちばん最後のコマみたいに。


   ピースの短い間の煙
   私は眼を瞑り 
   呼吸をしている

   かざした両手は
   色褪せない
   ライターはいつか点火する
   それを待とうか、
   なんて心地よく考えもしながら


「ライターはいつか点火する」 自転車で疾走しながら、左のポケットで。僕は燃えながら川に転落するかして、たぶん死ぬんだろう。そんな死を待つ気分は「心地よ」いんだって言う。

僕はタバコを吸わない。だけど、こんなふうに気持ちよく死のことさえ思うことができるなら、吸ってみてもいいかも、とか、思う。
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