草とフェンス/AB(なかほど)
君のいなくなった十月がやってくる
と思い出したその日に
決まって雨が降ったり
風が吹いたりするわけではない
ましてや
今日もまだじっとりするような
暑さの残る日に
君の住む町も同じように
まだ陽射しも強いのだろうなんて
そろそろ
フェンスのない町へ行きたい
と
歩きだした君は
今頃どこまで
歩んでいけたのだろうか
フェンス沿いを歩き続ける僕は
時折
もたれかかりながらも
未だかげろうにゆれる
アスファルトの方だけ
その向こうの白い場所だけ
を見つめている
そこは君の住む町ではないけれど
十月の風は吹いている
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