激痛/月邑 涙香
 
一つ山を越えるとまた次がある
幾つ超えれば痛みはなくなるのか

手につかめないものを傷めるよりも
手につかめるものを傷めた方が
その瞬間の邪念は消すことができる

でもその一時
ただそれだけ

だからなおさら
手につかめないものが暴れるのを
必死で抑えるだけ

通じるはずのない言葉を捜し
返ってはこない返事を待っても

その時間は過去に囚われ
餓鬼の奴隷となり
悪徳の下僕となる

その首筋に匕首を突きつけ
心中してもいいんだぜ

お互いに血を流しあおうか?
立ち上がれないほどに正気を失わせてやろうか?

狂気と正気が交錯する中に闇が見える


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