半仙戯/佐々宝砂
うつし世は春雨なりき芝居果つ
渡り廊下の左右より春の闇
洗ひ髪夜しか逢へぬ人と逢ふ
揚花火仰ぐ横顔盗み見る
首筋に跡を残せし残んの蚊
衣かつぎ妻は家では酔へぬもの
諍ひて逃げし野原のゐのこづち
遠くまで来て家出めく十三夜
秘密めくコートの裏の破れかな
狂ふことしばし許され野火猛る
涅槃図の口開けて泣きみな静か
漕ぎに漕げども繋がれし半仙戯
{引用=「半仙戯」とは「ブランコ」のことで、春の季語。これらの俳句は、私がとある俳句結社に所属していたころの作品である。わざわざ「不倫をしている人妻」を主人公に
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