ここにあること/石川和広
僕のカラダには裏山がある
街を自転車で走り抜けて
裏山が虚ろなる音
こだまする
君達とすれちがい
顔が痛い
裏山の木木がざわめく
鈍いろの
横たわる裸の老人
新聞に囲まれて
そのまま絵であり
なぐりつけられたような
轟音が僕の
裏山をつきぬける
女の胸
男の汗
ここは天王寺
裏山の密林
かけめぐる緑色の猿たち
川が流れている
人のカラダをしたものの中に
浮かぶ赤いランプ
裏山に火が放たれる
炎
炎
消え失せろ
消えるのよ
街行く声
波のように風
消えていく音
真空の裏山
宇宙
水
大地
うまれたこと
ただここにあること
言葉の光に
かげる裏山
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