フライト/まりょ
 


乗り出した半身
月の明かりは
雲にさえぎられていて
それでもこんなに明るい夜
君だけを
見ていられない

本当なら
目をつむったら
飛べるような気がしていた


窓を開けて
指の先まで伸ばして
裸の胸から落っこちた
飛び散るその中身を
かき集めているのだけれど

まとまらずに地面に
しみこんで失われてゆく


どうしても足りてない
そのまま、そのままで

やわらかなきみを
たぐりよせたら
始まる



悲鳴
悲鳴
悲鳴だけが
時計の針のように
正確に繰り返されて
ぎこちなく笑った
その夜に
落ちて
悲鳴
悲鳴
響く
悲鳴
遠い飛行機のエンジン音の中
研ぎ澄まされた残りの愛を
そそぐ



そしてかなしくて
時計の音だけが響く部屋の内側
脱ぎ捨てられたシャツ
眠りについた夜
すぐそばにあるはずの
あたたかいものに
まだ手が届かない





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