秋桜忌/落合朱美
あの子は逝ってしまったのよ
夏の名残の陽射しが注ぐ朝の庭で
何度か苦しそうに喘いで
だけどそのうち眠るように
少しづつ少しづつ
呼吸が弱くなって
愛するみんなが見守る中で
頑張ったけど頑張ったけど
とうとう力尽きて
それは静かな最期だった
おとなしくてわがままも言わず
控えめなあの子らしい
静かな静かな最期だった
必死で呼びかけた私たちは
為す術もなくて
あの子の桃色の舌が
真っ白に変わり果てるのを
ただ見ているしかなかった
あの子は逝ってしまったのよ
こすもすの花が咲き始めた朝の庭で
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