壁のない部屋/
野島せりか
私はあなたを失いたくないと
思っていたけれど
あの頃 あなたを失えるのは
確かに私だけだった
私はあなたに
遠くになんて行って欲しくないと
思っていたけれど
あの瞬間 あなたを遠くに追いやったのは
間違いなく私だった
壁のない部屋に取り残されたようで
あなたが今どこで誰と何しているのか
いちいち胸が痛い
ひとりになりたいと
思えば思うほど
特定のひとりを求めてしまう
壁のない部屋
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