壁のない部屋/野島せりか
 
私はあなたを失いたくないと
思っていたけれど
あの頃 あなたを失えるのは
確かに私だけだった

私はあなたに
遠くになんて行って欲しくないと
思っていたけれど
あの瞬間 あなたを遠くに追いやったのは
間違いなく私だった

壁のない部屋に取り残されたようで
あなたが今どこで誰と何しているのか
いちいち胸が痛い

ひとりになりたいと
思えば思うほど
特定のひとりを求めてしまう
壁のない部屋
戻る   Point(3)