みきすけとまきすけ/炭本 樹宏
 
長い文章を読めなくなっていました。
 彼女の渡してくれた宗教書はチンプンカンプンで、全然、意味など分からないものでした。
 そんなことより、彼女自身に興味を持ち、絶対に迷惑をかけないから、連絡先を教えてくれる
ように頼みました。彼女は2階の窓から名前と電話番号を記した紙を投げ落としてくれました。
 ここからがみきすけとまきすけの物語の始まりです。
 まきすけは私より先に退院しました。私は病棟にある公衆電話から電話を掛けたり、彼女から電話を受け取ったり、お互い電話を掛け合いました。
 その間にも家族、先生、ケースワーカーとの話し合いで、市の福祉の援助で部屋を借りて、
入居先を決めて退院
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