エロとロマンと、いつかワルツを/千月 話子
 
至近距離で選ぶ 想像の快楽とロマンチシズム
目線のやり場を 一体どこに持って行けばいいのかと
目視の限界点で 目をしばたたかせる男と女
何をそんなに見つめていたのかは、人それぞれである
まったく無関係な二人の話を


男は匂い立つ花屋の前で 鮮やかな赤い薔薇を見ていた

銀色の花受けに広がるビロードの花びら
棘はそのままの姿で 鋭く
素で束ねた五十本の薔薇を抱えるワタシの腕に
痛いほどオマエを感じる ああ、、エリカよ

ほの暗い街灯に照らされた淫靡なゲイバーの扉を開ける

オマエの踊る細い腰を引き寄せて
作り物の美しい胸の花瓶に
薔薇を一輪と水の溜まりを散らさぬ
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