晩夏/待針夢子
 

夏の終りに埋められた小さな命の殻。
わたしはまだその場所を教えてもらえない。
わたしが泣くのは、自分の足元に生活があるからだ。
迷わず生活を選択しながら、
どう仕様もないじゃないかと言い訳せずにいられない、
無様な後ろめたさが付き纏うからだ。


ピンクを纏った魔物の気配。
肉体には確かに魔物が棲んでいる。
すばらしい日々の水面が音を立てている。
いま何かを誘われればうなずくこともできる気がした。
昨日緑に塗ったサンダルを急いで脱いで、
投げ捨てたセンチメンタルを拾いに行く。
残暑の日差しが指令を下すように照りつける。



きみが行きたい場所にわたしは行きたくないよ。
物騒な話をしながら、

世界の終わりを待っているつもり?



火葬場のにおいと寝つきの悪さ、
夏はやっぱり好きじゃないな。
カレンダーの上を季節が滑る。

ただそれだけがとても嬉しい、わたしの歓び。


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