深海魚/こしごえ
 
やかん
電車内の実話で
ひるま
紫外線をあびていた座席が
まばら なまま
すいてはうまっていた

あいているせきへ
すわれるというのに
ひとり車輛の先頭にたち
いきづかいもなく
ゆられてゆく
ひとは・・・・・・

車窓の硝子をとおした
流景(るけい)の電燈を
無常なはとばで
羽根ペンをもち

 彎曲線(わんきょくせん)をなぞっている


そのめにうつる点滅し
ぼやける秒針を
酸素不足な水晶体で 像
をむすべる
 かと
せまりつづける水平線に
 うかぶ空間へ

いちべつをくれているのは
 みずからのひかりで
ふかぁく あめいろをはなちながら
へいこうしていく
鋼鉄のレール


ひとがすけたカオ

鏡像へと焦点をうちこむと
無情なる
その視線が街闇(がいあん)に点在する
あかりを裏がえしに
しれっとみつめていた







個人サイト「As H System」
詩集「遺伝子」掲載

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