ひとつの秋に/tonpekep
 
何もない処に秋がやってくるとき
ひっそりとして
わたしは言葉の行方を知らない
わたしはわたしを有りの侭にしている

夕くれに空はふりだし
空はそこらじゅうで実り始める
声を掬ったりすれば
わたしは誰にもみつからないよう光の透き間に入り込む

何気ない言葉を洗濯すると
美しい響きになる
それは陽に染み込んでいくようにして
秋の化石になったり
明日の辺に埋まっていたりする

遠いものたちのこどく
気づいているものたちのこどく
語り尽くせないこどく

呼吸を
美しく散在できる場所はどの辺りか

言葉を
遠のいてゆく音色にのせる
わたしはそれを悲しがったりしない
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