透明な平目 /狸亭
さがしあぐねた太古の村里
官能の奥にゆれうごく川面
頑迷な細根の入り組む過去
身悶える蒼白い肌が密かに
産卵する苦悩の狡猾な意図
かも知れないのにもっとも
外見は無口な黒いシャム猫
みたいで惹かれるのだ殊に
さしむかいの清潔な眼光と
間断のない涙と爆笑の繁茂
願望の渦にはパンドラの函
未知数の過剰をうずめる谷
燦燦超言語のサーチライト
完璧な青空には透明な羽衣
がうかびながれて其処彼処
見事な曲線描きつつ徐々に
爽やかな追い風をはらむと
回遊する平目の群れしかも
画面一杯拡大された青い鱗
みると途徹もない巨大魚に
逆らう白銀の太い車輪の音
幽かに轟き現れるダイナモ
楽聖モーツアルト描く円弧
水車が回るひっきりなしに
醒めることのない女の目元
悲しく色付き果てしなくも
変わりつづける夢物語の虜
密会の思いもかけない重荷
白髪三千丈をひたした薬湯
背中をみせてにっこり笑う
願望の老詩人にひきあわせ
別れて独り星空眺め悪酔い
(押韻定型詩の試み 22)
戻る 編 削 Point(2)