9月3日/はらだよしひろ
 



ベットは凍てつき



涙する 白い肌の赤みが

冷めていく 「臨終です」

の声が 染みていく



「ただいまあ」

こだまする ランドセルに付けた

鈴の音

肌黒く 靴を蹴り捨てて

「お母さん ただいまあ」

と駆け寄り そして

「これからおじいちゃんち いってくる」

と、ランドセルも放り捨てて

もう、走り出していった



あの子は知らない

『俗名 本間忠彦 享年 九歳』

と刻まれた位牌があの家にあることを



そんな9月3日は

残暑もまぶしい

子供達の声が聞こえる

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