砂をかんで/炭本 樹宏
 

 カラカラの喉をうるおそう

 あせっちゃダメ ダメ ダメ

 神様は人に時間だけは平等に与えてくれた

 走ってばかりいた少年時代

 早いことがいいことだと教えてくれたおかげで

 いまだにゆっくり歩けやしない

 しかし、子供はまぶしいなぁ

 自分に子供ができたら こんな名前にしよう あんな名前にしようなんて

 何気ない空白の時間に考えたりして

 灼熱の夏のような修羅は遠ざかり 今はちょっと穏やかだよ

 砂を噛むように人生に流されてきた

 もう一度そんな客人がきたら もうたえられない

 年をとると 守りたいものが増える

 臆病になっていく

 この胸には もう熱い血潮はながれないんだろうか

 ここまできて 謝るね

 これから春が来る 若者にはただの愚痴だもんね



 
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