手紙が/石川和広
形容詞が
見当たらない
生き物の震えは
魂だ
猫がないたら
魂だ
月が見えるとき
ただ見ている
それなのに
感じながら
ただ見ている時間は
魂だ
手紙が
届いた
昔の
彼女から手紙が
届いた
手紙が
届いた
名前が変わっていた
詩集の感想だった
この手で
詩集を送った
この手で
詩集を送った
封を閉じた
開いた
昔の彼女は
結婚していた
僕は知らなかった
それだけ
僕は
好きな人と
暮らしている
不自由だのに
なんとかやっている
そして
くりかえしながら
闇が光と交わる
時間だ
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