視線を奪う/midori
脳裏にやきつくのは 掴んだ手の感触。
繋いだんじゃない。握ったんじゃない。掴んだんだ。
そして電車に乗った。流れ込む電車。
君の手の感触は僕の体を各駅停車へと導く。
はにかんでもっと。
ここにいるとさびしいだなんて歌を教えないで。
僕はもう知りすぎたんだ。
もう何もしりたくない。何も何も。
僕は疲れたよ。
君のこと思うの疲れたよ。
気休めの誰かだと言われて
僕は傷ついたりしない。
僕だって人間だから悲しい気持ちにはなるよ。
でも僕は忘れる努力をするんだ。
その一言で僕は努力をスタートさせるんだ。
君の言葉が意味を持たないものだって、
僕は人間じゃないんだ、だから何を言われてもかまわないんだって、
叩き込むんだ。
僕はコンピューターだ。
キーボードに暗号をいれておくれよ。
ねぇ、はやくはやく。
そしたら僕は君のことを忘れられる。
言葉はもういらない。
何もいらない。
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