夏の葬列/大覚アキラ
 
乾いた熱い風が 海沿いの道路に吹きつけても

九月のアスファルトの上には もはや弱々しい陽炎さえ立たないのだ

海岸線と並行して走る二車線の国道は 気味悪いぐらいスムースに流れていて

八月には駐車場みたいだった道路が いまやまるでアウトバーンのようだ

そして 音もなく走り去る車の群れのすぐ横を とぼとぼと歩くおれは

まるで一人っきりの葬列のようで 黒い日傘でもあれば絵になるのに と思う

おれと おれの影だけが くっきりとゆっくりと

何度も通いなれた道を歩くように 砂浜へと下りてゆき

こんなにも空は青く こんなにも風は心地良く こんなにも光は踊っているのに
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(4)