泣く秋/千月 話子
 

午後11時55分の川面に浮かぶ 昨日行きの船は
今日の悲しみを乗せて 海の彼方へ


満ち潮には 増減があるのだと
思い巡らす 詩人の夕暮れる刻
紅葉した太陽が 海へと流れ行く


この 喜怒哀楽の微妙な瞬間に
「泣いているのですか?」と
消え落ちる 夕日に問いかける


あなたの頬に 涙


入れ替わる月が引き寄せる船へ運ぶ ので
明日の砂浜は 少し狭い
と 秋が予言した






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